大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和62年(行コ)53号 判決

千葉県八日市イの一三八番地の一〇

控訴人

株式会社 千葉農林

右代表者代表取締役

岡野全孝

右訴訟代理人弁護士

横井治夫

千葉県銚子市栄町二-一-一

被控訴人

銚子税務署長

水木善造

右指定代理人

山口晴夫

沖上照

剣持哲司

白石信明

主文

本件控訴は棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が控訴人に対して昭和五五年二月二六日付でなした控訴人の昭和五一年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度の法人税の更正及び過少申告加算税賦課決定をいずれも取り消す。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨

第二  当事者の主張は、次のとおり附加、訂正するほか原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

1  原判決一五枚目裏一〇行目「償与」を「賞与」と改める。

2  同二三枚目表七行目末尾に「しかし、本件の譲渡収益の分配は宇野亨が適宜に行ったものではなく、予め確立されていた基準に基づき、先例(渡辺パイプに対する売却の場合)に従って実行されていたものである。」を加える。

3  同二三枚目裏一一行「六か付後」を「昭和四四年六月末日」と改め、同行末尾に「これは実質上予約の補償金があったが、右手形の支払期日前の昭和四四年六月四日原取得地の売買契約が締結されたことに伴い、同手形は買主に返還され、決済されなかった。」を加える。

4  同三一枚目梅一〇行目「すきず」を「すぎず」と改め、同三三枚目表四行目「(三3(二)」のあとに「を」を加える。

5  同三五枚目表五行目「大洋興産」から六行目「認める。」までを「本件土地の譲渡収入及び原価の各配分割合は認め、その余は否認する。」と改める。

第三  証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当裁判所は、控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきものと判断するが、その理由は次のとおり附加、訂正するほか原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決四二枚目裏六行目「各証言」のあとに「並びに本件口頭弁論の全趣旨」を加え、同四三枚目表一行目「手付金の支払のため」を「予約の補償金の趣旨として」と改め、同二行目「名義の」のあとに「支払期日を昭和四五年六月末日とする」を同三行目末尾に「右手形は、後記のとおりその支払期日到来前に原取得地の売買契約が成立した際、振出人に返還された。」をそれぞれ加える。

2  同五十三目裏五行目「手付金」を「予約補償金」と、同七行目「だからといって」を「右手形は、宇野亨が将来前記買受け条件が整った場合に原取得地を買い受けることを約し、その保証の趣旨でこれを東邦工業に振出交付したものであるところ、右の段階においては買主はじめ売買の諸条件が未確定であり、なお、原取得地の売買契約成立とともに振出人に返還されていることをも考え合せると、右事実から直ちに」とそれぞれ改める。

3  同五五枚目裏五行目「右買受代金を」から同九行目「でなく」までを「前掲甲第一〇号証、成立に争いのない甲第二三号証、原審証人宇野亨の証言によれば、旧国有地の買受け代金が大洋興産の資金をもって賄われたことが認められるが」と改める。

4  同五七枚目裏九行目のあとに改行して「当審証人安井勇司の証言及び同証言によって成立の認められる甲第二二号証の一、二、原本の存在及び成立について認められる第二五号証の一ないし五によれば、大洋興業は、阿部土地建物から、同社が立替払し未精算のままとなっていた本件土地の固定資産税等の支払請求を受けたので、昭和六二年一〇月一日、その支払のため関連会社である株式会社福富振出名義の手形を交付したことが認められる。しかしながら、本件口頭弁論の全趣旨によって成立の認められる甲第三〇、第三一号証の各一、二、原本の存在及び成立ともに争いのない乙第三九号証ないし第四五号証によれば、右未精算金は、昭和五一年から昭和五七年まで控訴人の会計帳簿には未払金勘定として計上されていたところ、本訴提起後の昭和五八年一二月にってはじめてこれが雑収入勘定に振替処理されていたことが認められ、しかも、右の請求及びその支払のため手形振出が当審の係属中になされていることが本件記録上明らかであり、したがって、前認定の未精算金の処理には作為が加えられた疑いなしとし難く、してみれば右事実をもって直ちに前記の推定を覆すに至らない。」を加える。

5  同六〇枚目表一一行目のあとに改行して「なお、控訴人は、およそその収益の八割相当分を他の企業に寄付するなどは、営利企業の行為として条理上ありうることではないし、取引の経済的実質にも反する旨主張するが、被控訴人は、前記のとおり本件土地の譲渡益が全額控訴人に帰属する以上、控訴人がその収益の一部を大洋興産外一社に各配分したことをもって、これを税務上寄付金と把握しその処分をしたものであるから、控訴人の右主張は当たらない。」を加える。

二  よって、これと同旨の原判決は相当で、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 秋吉稔弘 裁判官 山中紀行 裁判官 武藤冬資己)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例